東京、日本 – タイヤやパッキング材、シーリング材などで幅広く使われるEPDMゴム(エチレン・プロピレン・ジエンポリマー)に、画期的な高性能化の兆しが現れた。中心となるのは有機過酸化物架橋剤「ビス(tert-ブチルパーロキシイソプロピル)ベンゼン」、通称BIBPだ。高い架橋効率と従来より大幅に低減した臭気を兼ね備えた同剤は、メカニカル特性、耐熱性、耐久性すべてを一挙に向上させる新たな選択肢として注目を集めている。

成型後の残留臭気を最小限に抑えたい製品設計の要望が高まるなか、BIBPは「臭わない架橋剤」として業界の新スタンダードとなりつつある。EPDM配合においては、圧縮永久ひずみを低減し、低温でも柔軟性を保持する効果が確認されており、自動車用ウォーターホースや建築用防振ゴムといった過酷な条件下での使用に理想的だ。さらに、スコーチの余裕が広く、コンパウンド工程での早期架橋リスクを抑えることができるため、バルケットでの作業効率も向上。架橋密度が高いため、少量添加で目標特性に到達し、コスト面でも有利に働くケースが多い。

EPDM以外のポリマーでもBIBPの活用は広がっている。シリコーンゴム、EVA(エチレン・酢酸ビニル共重合体)樹脂、NBR(ニトリルゴム)、フッ素ゴムなど、様々なエラストマーに高機能架橋ネットワークを形成。特にEVAフォームでは、靴底やスポーツ用品用途で要求される「無臭性」を確保しつつ、クッション性と耐久性を両立させる。

さらに注目すべきは、PP(ポリプロピレン)における機能制御だ。BIBPは分解剤・MFR(メルトフローレート)改質剤としても活用され、メルトブローン不織布用や繊維グレードPPなど、特定の流動特性を求める用途で精密な樹脂設計を可能にする。フィルター材や保護服といった高機能不織布の品質向上にも貢献する。

製品性能の向上と生産プロセスの最適化を同時に実現できるBIBPは、今後のポリマー業界における鍵となる添加剤となるだろう。厳格な品質基準を満たしつつ、コストメリットを生み出す「選択すべき架橋剤」を求める企業にとって、BIBPは確実なソリューションとなる。