動物の細菌感染症を成功裡に治療するには、抗生剤の適切な使用が欠かせません。獣医療の現場で広く用いられるセファロスポリン系抗菌薬「セフチオフル・ナトリウム」も例外ではなく、効果の発揮と安全性確保のために、投与量・投与経路・休薬期間に注意深く対応する必要があります。本稿では、治療効果を最大化するための実践的ポイントを獣医師・畜産関係者向けに整理しました。

各種動物別推奨投与設計

牛:
標準的な用量は1日あたり体重1 kg当たり 1.0 mgを目安に、筋肉内投与で3日間連続投与します。重症例や初期投与で改善が見られない症例では、期間を延長することも可能です。急性指趾壊死症(フットロット)の場合も同様の投与量・スケジュールで対応します。

豚:
細菌性肺炎治療では、体重1 kg当たり 3.0–5.0 mgを1日1回筋注、3日間連続のレジメンが一般的です。アクチノバチラス・プレウロニューモニエ、パスツレラ・ムルチシダといった主要な呼吸器病原菌を確実に抑えるよう設計されています。

綿羊・山羊:
呼吸器感染症には、体重1 kg当たり 1.1–2.2 mgを1日1回筋注し、3日間投与します。泌乳中の雌羊では薬剤消失が速やかになるため、上限に近い用量を選択するケースが増えています。

馬:
呼吸器感染に対しては、体重1 kg当たり 2.2–4.4 mgを24時間ごとに筋注。臨床症状が消失してから48時間の追加投与を行い、全期間は10日を超えないよう調整します。

犬:
尿道感染症には、2.2 mg/kg を皮下投与し、5~14日間継続します。犬への使用が承認されているのは1 gバイアル製剤のみであり、無菌針・シリンジを用いて、無菌手技で必ず実施することが義務付けられています。

溶解・投与手技

セフチオフル・ナトリウムは、使用直前に無菌蒸留水またはバクテリオスタティック水で溶解する凍結乾燥粉末製剤です。添付文書に従って50 mg/mL濃度に調整し、溶解及び投与は完全無菌操作を貫くことが鉄則です。筋注には18ゲージ・1–1.5インチ針を用い、同一部位への注入量は10 mL以内に留め、局所刺激を回避してください。

重大な注意点:休薬期間

食肉・産乳動物に対する最大の利点は、 cattle および仔羊でラベル用法・用量通り使用した場合、肉用撤回期間および搾乳停止期間がゼロに設定されている点です。

一方、馬への投与を行った個体は、食用として屠殺してはならない旨の制約が存在します。投与対象動物ごとの制度を誤解すると深刻な残留違反につながるため、事前に確認と記録を必須とします。

実践的留意事項まとめ

診断は適正な検査で確実に特定し、使用抗菌薬選択につなげることが治療成績の決め手になります。また、投与開始後は病態経過を丁寧に観察し、治療反応に応じて継続・変更・中止を判断します。セフチオフル・ナトリウムは広いスペクトラムを持つ一方、感受性試験結果を踏まえることでさらなる効果向上が狙えます。

まとめると、正確な用量計算・無菌操作に基づく適切な溶解・投与・確実な休薬期間の遵守こそ、獣医療現場でセフチオフル・ナトリウムを安全かつ有効に用いるための四本柱となります。このガイドを参考に、動物の健康と食品衛生の両立を図っていただければ幸いです。