ファッションにおける環境負荷低減が急務となるなか、繊維プリント業界に大きな転換期が訪れている。低温硬化対応バインダーの登場だ。これまで160〜180 ℃程度が必要だった熱硬化工程を、100 ℃前後まで大幅に引き下げることに成功した。結果として、エネルギー消費は最大でも40 %削減、コストは約3割削減できるとの試験データもある。

低温硬化の最大のメリットは、熱による生地ダメージの回避だ。高級絹布や伸縮性ニットなどデリケートな素材でも、風合いや色鮮やかさを損なうことなくプリントが可能となる。しかもホルムアルデヒドフリー設計により、肌にやさしく、小さなお子様の衣服やベビー用品にも安心して使用できる。

洗濯耐久性の向上も見逃せないポイントだ。最新のバインダーは、50 回の家庭洗濯後でも色落ちΔE2以内に留めるなど、従来品と比較して抜群の色堅ろう性を実現。さらに、パール顔料や特殊メタリックインクとの相性も良く、高付加価値デザインの表現幅を飛躍的に拡大する。

対応プリント方式も多彩だ。ローラー式の大量生産はもちろん、シルクスクリーンやハンドプリントといった少量多品種にも柔軟に対応し、打ち合わせから納品までのリードタイムが従来の半分に短縮される事例も報告されている。大規模工場はもとより、デジタルテクノロジーを活用したアトリエ事業者にも最適な選択肢だ。

環境規制強化や消費者のエシカル意識の高まりを背景に、低温硬化バインダーはすでに多くのブランドや縫製工場で採用が進んでいる。低温硬化バインダー 製造メーカーは、製品供給に加え、現場の温度・湿度条件に応じた硬化条件の最適化支援や、既存生産ラインへの組み込みコンサルティングまで行っている。サステナブルで高品質なものづくりを目指す企業にとって、今こそ向き合うべき技術革新といえる。