ジクロロメタン(DCM、別名:メチレンクロライド、CAS 75-09-2)は塗料除去や医薬品抽出など幅広い用途に使われる強力な工業用溶媒です。しかし、高い効果の一方で蒸気が非常に揮発しやすく、毒性や引火リスクを伴うため、安全管理が不可欠です。本記事では工場内でのDCM取り扱いに必要な実践的な安全ポイントを整理します。

揮発性を理解し、換気を最優先に
無色でやや甘い香りの液体であるDCMは、気温が僅かでも容易に気化します。換気が不十分だと屋内に蒸気が滞留し、吸入によりめまいや中枢神経抑制を引き起こす恐れがあります。

① 換気システム 局所排気装置を蒸気発生源に極力近接させるとともに、作業フロア全体に十分な総合換気を確保してください。また、装置・プロセスは密閉化し、開放操作をなるべく減らすことが望ましいです。

② 保護具の選択 

  • 呼吸用防護具:空気中DCM濃度に応じた有機ガス吸収缶付きの防毒マスクまたは空気呼吸器を選択。密閉度は必ず工場衛生基準値を下回る設計にする。
  • 手袋:標準的なニトリルやナトリュラルラテックスでは浸透しやすいため、Viton®またはPVA(ポリビニルアルコール)製耐薬品手袋を着用する。
  • アイウェア:Splash対応のゴーグルまたはフェイスシールドで目をカバー。
  • 防護衣:薬液が皮膚に飛散する可能性がある場合は、耐薬品性エプロンや防護服を追加。

③ 貯蔵環境の確保

  • 密閉容器を冷暗所に保管し、直射日光や熱源を避ける。
  • 保管エリアは換気良好で、可燃物との混在を回避。表示は労働安全衛生法に基づく可燃性液体標識を掲示。
  • 容器材質はメーカー仕様どおりのスチールドラム(例:270kg入りドラム)を使用し、ステンレスや適合する合成樹脂への置き換えも検討。

④ 取扱手順の徹底

  • 皮膚・眼・衣服への直接接触、また直接的な蒸気吸入を避ける。
  • 搬入・分注時は容器を接地・ボンドして静電気放電を防止。
  • 万一の漏洩は、適切な吸収材とPPEを用いて速やかに封じ込め、汚染物質は有害廃棄物として処分。

法令対応
最新版のSDS(安全データシート)を常に配置し、労働安全法、消防法、水質汚濁防止法などの国内規制を含めて逐次コンプライアンスを確認してください。

DCMは生産効率を高める強力な溶媒である一方、適切な管理が安全と品質を守るカギです。教育訓練と投資を惜しまないことが、事故ゼロにつながります。

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