昨今の美容業界で注目を集める“ビマトプロスト”。もともと緑内障・高眼圧症の治療薬として開発されていたプロスタグランジン誘導体だが、付随効果として“まつげが伸びる”という驚きの結果が認められた。それが医療から美容への大転換につながり、まつげが不足している“睫毛稀少(まつげきしょう)”に対する外用治療薬としてFDAの承認を得て登場。Latisse®などのブランドが商品化することで、今では誰もが「長く・濃く・黒いまつげ」を手に入れる時代となった。

ビマトプロストがまつげを劇的に変える“いきさつ”は、毛包に存在するプロスタグランジン受容体への作用にある。まつげは一般的に〈成長期(アナーゲン)〉→〈移行期(カターゲン)〉→〈休止期(テローゲン)〉という周期を繰り返すが、ビマトプロストはこのうち成長期の期間を大幅に延長。1本1本の毛が過去よりも長く育つため、結果として「長さ」が際立つようになる。また、同時に成長を始める毛の本数が増えるため「ボリューム感」も増す。さらに、色素を産生するメラノサイトを刺激することで、毛そのものの色が黒っぽくなる点も見逃せない。

効果を最大限に引き出し、副作用を最小限に抑えるには正しい塗布方法が不可欠。基本は1日1回、滅菌済アプリケーターで上まぶたの毛根元に点線状に塗るのみ。毎日継続することが成否を分け、効果実感までに数週間は必要とされる。一方で、目の充血やかゆみ、まぶたの色素沈着、まれに虹彩の色が永続的に変わるなどの副作用報告もある。まつげラインにではなく眼球に直接入る塗り方は、副作用リスクを著しく高めるため厳禁だ。使用を検討する際は、必ず医療機関で相談し、正しい手法と留意点を指導してもらうことが勧められる。