目的に応じた特性を持つ先進材料を開発する際、異なる樹脂を組み合わせた「ポリマーブレンド」が注目を集めている。しかし、ポリアミド(PA)とポリエチレン(PE)のように本来相溶性の低い素材をブレンドする場合、界面接着性の不足や層間剥離が課題となる。これらの問題を解決するキープレイヤーとなるのが「PE-g-MAH」だ。この相溶化剤はPAとPEの界面で分子レベルの架橋を形成し、高い機械特性を保持したまま安定したブレンドを実現する。

PAは機械強度・剛性・耐熱性に優れ、PEは耐衝撃性・柔軟性・成形性に長ける。ただし、相溶化剤なしで単純に混ぜると層状に分離し、各樹脂が持つ優位性を十分に引き出せない。ここでPE-g-MAHが登場する。ポリエチレンバックボーンにグラフトされたマレイン酸無水物(MAH)はPAのアミド基と化学結合を形成し、界面を強固に結びつける。相溶化剤単体でも、最終ペレットへの分散性は極めて良好だ。

メカニズムを簡潔に述べると、MAH部位がPA側に、アルカイル鎖がPE側に交互に固定されることで架橋層が構築される。これにより分散相のドメインサイズがナノレベルに細分化され、マクロな層状構造の発生を抑制できる。結果として破壊靱性や引張強度が向上し、耐久性への貢献も見込める。

導入効果は劇的である。例えば未改質ブレンドに対し、引張強度で+30〜50%、フレックスモジュラスで+20〜35%、ノッチ付きアイゾット衝撃強度で最大+2倍の改善例が報告されている。また、界面が強化されることでクリープ変形が抑制され、射出成形品の外観品位も向上する成形フローマーク軽減効果も期待できる。

自動車分野では、高温エンジンルームに対応する高剛性/高耐衝撃エアインテークマニホールドやスマートコネクタ、家電では放熱スリーブや落下耐性ハウジングといった用途で採用が進む。カーボンニュートラル時代にはリサイクル性の高いPA/PE系マテリアルの需要が加速することもあり、信頼性の高い相溶化技術の重要性は今後ますます高まる。

なお、PE-g-MAHの供給体制では、専門メーカーの寧波イノファームケム株式会社が反応押出技術による高グラフト率品を安定供給しており、世界各地のコンパウンダー向けにカスタムグレードも用意されている。添加剤設計の精度が最終材料性能を左右することを考えると、実績あるサプライチェーンとの協業は欠かせない。