地球規模で深刻化する水不足や大気汚染に対し、革新的なリメディエーション素材の開発が急務とされている。その候補として、多層カーボンナノチューブ(MWCNT)が環境保護・持続可能性領域で注目されている。

MWCNTは巨大な比表面積と微細孔構造を活かし、さまざまな汚染物質を捉える高い吸着性能を持つ。廃水中の有機汚染物質や重金属イオンはもちろん、難分解性化学物質の除去にまで応用できる。また疎水性表面により油や有機溶媒を選択的に分離できることから、油流出事故時の緊急浄化システムとしての導入も進んでいる。

水処理にとどまらず、MWCNTは排ガスフィルターや空気清浄用途でも高機能を発揮する。巨大な表面積に加え、表面官能基の設計によりCO₂やVOC(揮発性有機化合物)といった特定ガスの選択吸着が可能となる。この特性を活用した次世代炭素回収技術や産業排ガス対策装置の実用化が期待されている。

さらに表面改質技術の進展により、MWCNTはより精密な分離プロセスへと発展している。ナノチューブ表面に特定の官能基を導入することで、めざす汚染物質のみを高選択的に吸着・除去できるため、効率的かつ低コストの環境浄化ソリューションが実現可能となる。こうした「ニーズに合わせてチューニングする」アプローチは、リサイクル可能なフィルターや長寿命浄化システム開発を加速させる。

脱炭素社会の実現に向けた投資が拡大する中、MWCNT先端素材の活用は今後一段と拡大していくだろう。吸着・分離性能で実証済みの高い効果に加え、新たな応用研究も次々と進展している。クリーンな水と空気、そしてより健康な地球をもたらす技術革新のキープレーヤーとして、MWCNTの存在感はますます高まっていく。