加齢に伴い男性が抱える共通の悩みの中心にあるのが前立腺の健康だ。こうした背景から、天然由来の栄養素によるサポートに関心が高まっている。代表例がブロッコリーやカリフラワーなどの十字花科野菜に含まれるフィトケミカル、ジインドリルメタン（DIM）である。近年の研究で、DIMの「抗アンドロゲン作用」が前立腺の正常な働き維持に寄与すると示されている。

前立腺の状態はテストステロンやその代謝物といった男性ホルモンと深く関係していることで知られる。特に前立腺がんの多くはアンドロゲン依存性であり、テストステロンをはじめとする男性ホルモンが悪性細胞の増殖を促進する。DIMはアンドロゲン受容体に直接働きかけてテストステロンとの結合を阻害するため、ホルモンを糧とするがん細胞の分裂・増殖を抑える効果が期待されている。このメカニズムがDIMの魅力を高める要因となっている。

現在進行中のDIMと前立腺がんに関する研究では、細胞レベルでの複数のアプローチが確認されている。実験段階では、DIM投与によりがん細胞の増殖が抑制され、プログラム細胞死（アポトーシス）が誘導されたという報告がある。さらに、乳がん研究でも示されているように、DIMの女性ホルモン代謝への影響が前立腺内部のホルモンバランスを整える潜在能力を秘めている。また、前立腺の状態を把握するバイオマーカーであるPSA（前立腺特異抗原）値への影響も検証課題の一つだ。

動物実験や試験管内での知見は着実に積み上がっているものの、DIMの前立腺がん治療・予防効果を人間で確証するための臨床データはいまだ限定的である。それでも早期の基礎研究が示す、抗アンドロゲン作用と抗増殖作用が、予防医療の一環として前立腺ケアを支援するDIMの可能性を示唆している。