治療抵抗性を抱えるがん患者に新たな希望をもたらす分子標的薬 XL765。本稿では、その革新的な作用機序と臨床展望を徹底解説する。

PI3K/mTOR 経路は細胞の増殖・生存・血管新生を司る中枢シグナル網であり、50%以上の固形がんで異常活性化が報告されている。XL765(開発コード:SAR245409、一般名:Voxtalisib)は、単剤でPI3K 複数イソフォームとmTORの両分子を同時に封じ込める世界初のデュアル阻害剤である。この包括的ブロックにより、単独標的治疗で見られる獲得耐性を回避する可能性が高い。

実験系・臨床現場で立証される抗腫瘍効果

前臨床モデルでは、XL765 投与によりがん細胞の生存率が大幅に低下し、がん細胞死(アポトーシス)が誘導されることが確認されている。さらにオルソトピックモデルでは腫瘍増殖の顕著な抑制が示されており、既存薬との併用で相加・相乗効果も観測された。

進行中の臨床試験

現在、アメリカ・欧州・アジアで多施設共同フェーズ I/II 試験が進行中。初期データは、進行膵がん、トリプルネガティブ乳がん、再発膠腫など難治性固形がん患者で客観的奏効率(ORR)の向上と、投与用量に比例したPI3K/mTOR シグナル遮断を示している。国内でも2024年中に医師主導治験が始動予定だ。

医療現場へのアクセル

基礎研究および臨床開発を加速するため、信頼された試薬サプライヤーによるGMP 基準に準拠した XL765の供給体制が拡充されている。高純度試薬の安定的入手により、より詳細なバイオマーカー探索や個別化治療戦略の立案が期待される。

XL765 は、真の意味でのPrecision Oncology を実現する切り札として、その臨床導入に向けた最終段階に差し掛かっている。今後の治験結果如何では、がん治療ガイドライン改訂の大きな要因となり得る。