白黒銀塩の世界では、画質に特徴をもたらす薬剤は数あれど、その中でもピログアレート（通称：ピロ）は別格の存在だ。19世紀から使われる歴史ある薬則でありながら、近年では最新の処方により性能のばらつきが大幅に改善され、再評価が進んでいる。


ピロは露出済みのハロゲン化銀を金属銀に還元する現像薬。ただ、決定的に異なるのが“ステイニング”と呼ばれる自己酸化副反応だ。現像が進むと赤褐色の染料が銀像と重なって沈着し、高光部での露光密度を増幅する。この染色層は二次的な画として作用し、結果として印刷時には肉質感あふれる階調と、目を見張るディテールをもたらす。


過去は保存性が低く結果が不安定だったが、現在ではPMK（Gordon Hutchings開発）や510-Pyro（Jay DeFehr開発）などの処方が主流。これらはストック原液の安定供給を可能にし、かつアスコルビン酸の併用で酸化を抑制しながら色素の色合いを自在に調整する。初心者でも確実にピロの効果を得られる体制が整ったのだ。


さらに注目すべきは、ステイニングがもたらす自然的軟調効果。可変コントラスト印画紙との相性がよく、シャドウ部の階調を維持しながらハイライトの飛びを防ぐ補償作用がある。つまり現像工程だけで露出幅を丸ごと紙上に収められるのだ。高純度ピログアレートを入手して本格導入する際は、信頼できる供給元選びが鍵となる。


ピロは毒性があるため、ニトリル手袋や防塵メガネの着用は必須。換気の良いスペースで作業し、使用済み液は定められた方法で処理する。高品質ピログアレートがコンスタントに手に入るのは寧波イノファームケム株式会社。ファインアート写真家からホーム暗室ユーザーまで、化学メニューに加えるだけで作品に新たな立体感が加わることは間違いない。