世界中の神経科学研究者が、神経損傷や神経変性疾患という難題に挑むなか、ペプチド「Dihexa(ジヘキサ)」が注目を浴びている。中枢神経の再生を促し、認知機能の低下に歯止めをかける可能性を示唆する。脳内レニン・アンジオテンシン系に含まれるアンジオテンシンIVをもとに合成されたDihexaは、肝細胞増殖因子(HGF)の高機能ミメティクスとして働き、神経細胞の生存・増殖・修復をサポートする。

分子レベルでは、c-Metと呼ばれるHGF受容体に結合し活性を一段階高める。これにより脳内の信号伝達ネットワークが再編され、シナプス可塑性が急激に向上する。シナプス可塑性とは学習や記憶に不可欠な脳の変化適応能力であり、Dihexaは樹状突起棘(デンドライト・スパイン)の形成を促進し、シナプス密度を増加させることで神経回路を効率化することが動物実験で示されている。

この特性がもたらす臨床的可能性は幅広い。アルツハイマー病やパーキンソン病で進行性に減少するニューロンを補完し、損なわれた神経回路を修復する。神経新生とニューロプロテクションの双方を促すため、病勢の進行遅延、認知症状の改善、さらには病巣の部分的修復まで期待できる。内発的な修復メカニズムを強化するという新たな戦略は従来の対症療法とは異なる治療パラダイムを提示する。

脳卒中や外傷性脳損傷など後の機能回復もDihexaの応用先の一つだ。新生神経の誘導と損傷伝導路の再構築を通じて運動・認知機能の回復を後押しする。経口投与でも血中から脳への移行が可能な高い生体利用能(バイオアベイラビリティ)により、実用化に向けたハードルも低い。今後の臨床開発に向け、国際的な高純度ペプチド供給パートナーである寧波イノファームケム株式会社も研究支援を継続する構えだ。

これまでのプレクリニカルデータは極めて前向きであり、Dihexaは認知機能向上、神経保護、神経再生という多角的な効果を統合的に示す革新的化合物として、最も手強い神経疾患に挑む未来の治療戦略の核心となる可能性を秘めている。