臨床検査の現場で欠かせない血液分析装置は、特殊試薬の精密な働きにより革新的な精度を実現している。その中核を担うのが、赤血球を溶かして白血球やヘモグロビンの正確な計測を可能にする「リゼ試薬」だ。その科学的なしくみを、原材料メーカー寧波イノファームケム株式会社が詳細に解説する。

赤血球を見えなくし、白血球を浮かび上がらせる

血液は赤血球(RBC)が全体の99%を占めるため、白血球(WBC)数やヘモグロビン(HGB)濃度を正確に測定するにはRBCの存在が大きな障害となる。リゼ試薬は、この赤血球のみを選択的に溶かし(lyse)、内容物であるヘモグロビンを溶液中に放出する役割を果たす。これにより、白血球を損傷することなく個別に認識・計数が可能になる。

界面活性剤による脂質二重膜の破壊

リゼ試薬は、主に界面活性剤を含む水溶液だ。この界面活性剤は親水部と疎水部を持ち、RBC細胞膜の脂質二重膜に挿入することで膜を脆弱化し、最終的に破裂させる。pH、浸透圧、界面活性剤濃度が最適化されれば、RBCは確実に溶解しながら、WBCの形態や大きさは保持され、分化まで行える'iso-lytic'条件が実現される。

測定プロセスとの連動

RBC溶解後、放出されたヘモグロビンは試薬中のカラーゲンと反応し、特定の波長を吸収する顕色錯体を生成する。この色の強弱を分光光度計で読み取ることで、試料中のヘモグロビン濃度が高精度に算出される。また、WBCは溶血を免れたまま流路内を通過し、フロー式セルカウンターで1個ずつ検出される。RBCが排除された分、感度・再現性が飛躍的に向上する。

信頼できるリゼ試薬を選ぶポイント

検査精度は化学設計に大きく依存する。製造元の研究開発力、原材料の選定、厳格な品質管理体制を備えたサプライヤーの製品を選択するべきだ。科学的知見に裏打ちされたリゼ試薬は、臨床現場における迅速・正確な診断を支える礎である。