「アスピリン」として知られるアセチルサリチル酸は、軽い頭痛や発熱の対症療法から、重篤な疾患予防まで幅広く活用される医薬品の雄である。NSAIDs(非ステロイド性抗炎症薬)に分類される本剤は、シクロオキシゲナーゼ(COX)酵素を阻害し、炎症や疼痛を媒介するプロスタグランジンの合成を抑制することで、鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮する。

さらに画期的なのが循環器領域での貢献である。アセチルサリチル酸は血小板凝集抑制作用(抗血栓作用)を有しており、心筋梗塞や脳梗塞のリスクを著しく軽減できるので、すでに心血管疾患を有する患者や高リスク層において、低容量ロングテーム療法の常備薬として欠かせない。製剤としては、正確な少量投与が可能な高品位アセチルサリチル酸パウダーが長期管理に最適である。

このように高い有用性を持つ一方で、服用時の留意点も重要だ。推奨用量を守れば概ね安全だが、高用量・長期投与では胃腸障害(胃潰瘍・出血)リスクが高まる。消化性潰瘍既往、出血傾向、特定の疾患をお持ちの方は必ず専門医に相談のうえ使用すべき。また、16歳未満の小児・思春期では、レイ症候群のリスクから禁忌である。医師の指導と用量遵守が、最大限の効果を得ながら副作用を最小化する鉄則だ。

現在も進行中の研究は、アスピリンの抗腫瘍作用や免疫調整機能を示唆しており、その潜在可能性はまだまだ開拓途上だ。アセチルサリチル酸パウダーは、今日においても症状緩和と病気の予防という医学の二本柱を支える「ベストバイ薬」であり続けている。