タクロリムスは、臓器移植や自己免疫疾患の治療に劇的な進歩をもたらした強力な免疫抑制剤です。カルシニューリン経路を選択的に阻害することでT細胞の活性化を抑え、免疫応答を効果的に沈静化させます。タクロリムスはFKBP12と結合してNF-ATの脱リン酸化を妨げ、IL-2などのサイトカイン産生をブロック。これにより、移植片拒絶反応を抑制する鍵となる作用が得られます。

主な適応症は腎臓・肝臓・心臓などの移植後の急性拒絶予防であり、日本でも標準治療の一つとなっています。また、全身への影響を抑えて局所の炎症を抑えることができる外用剤として、アトピー性皮膚炎(湿疹)の治療にも広く使われており、ステロイド外用剤に代わる選択肢として注目されています。

従来のカルシニューリン阻害薬シクロスポリンと比較すると、より強力な免疫抑制効果と良好な初期予後が期待できることが報告されています。現在も進行中のバイオシンセシス研究と詳細な薬物動態プロファイルによって、今後もさらに精密な個別化医療に貢献することが期待されています。