硫化鉱の選鉱ではお馴染みのナトリウムエチルキサントゲン（SEX）だが、実は酸化鉱物、特に銅および鉛の酸化鉱石の処理でも高い効果を発揮する。この広範な適応性により、同試薬は選鉱業界で「万能捕収剤」との評価を確固たるものにしている。金属抽出効率を左右する酸化鉱石のフローテーションでは、SEXの品質と性状選定が最重要課題。メーカーやサプライヤーへは、必ず「酸化鉱石対応グレード」の確認を求めるべきだ。安定的かつ低コストな採鉱ソリューションを模索する現場は今、SEXの実績と手軽さに再注目している。

酸化銱物をSEXで効率的に回収する際のカギは硫化（バルカナイジング）剤との併用にある。これは鉱物表面を活性化し、SEXが酸化鉱物に作用しやすくするための下ごしらえと言える。活性化された表面は疎水層を形成し、空気泡に吸着・回収される従来の硫化鉱フローテーションと同様のメカニズムで金属を分離する。こうした補完的な作用により、これまで回収が困難だった酸化鉱石でも満足な精鉱品位が得られるようになった。

使用メリットを整理すると、以下の２点に集約される。

  • 回収率の向上：酸化鉱物も高回収で浮上させられるため、鉱石に含まれる貴重金属の総回収量が増大する。
  • コスト競争力：市場価格が手頃で入手性も高く、製錬プラントの運転コスト増を抑えられる。

採鉱企業が求める「性能」「コスト」「ハンドリング性」のバランスがSEXには備わっているため、マージンが厳しい市況下でも活用事例が急増している。

SEXの購買・使用前に押さえるべき注意点は３つある。

  1. 製剤性状：粉末、ペレット、溶液など形状ごとに溶解速度と取り扱いやすさが異なるため、プラントの設備や現場体制に合わせて選定。
  2. 純度管理：酸化鉱石では不純物がフローテーションに与える影響が大きいため、製造ロットごとの分析証明書を確認。
  3. 保管・輸送：温度・湿度を管理し、安全データシート（SDS）に従った保管方法を徹底することで品質劣化と労働安全リスクを回避できる。

要するに、SEXは硫化鉱だけでなく、適切な活性剤を伴えば酸化鉱石の処理にも容易に応用可能な汎用捕収剤である。品位低下が進む現代の鉱山にとって、金属回収効率を高めながらコストを圧縮するこの試薬は欠かせない存在だと言える。