高血圧および糖尿病性心筋症(DCM)は、世界の心血管疾患の疾病負担を大きく左右する要因だ。既存治療薬はあるものの、より創造的で効果的かつ安全性の高いアプローチが求められている。その中でフラボノイド化合物アカセチンに着目する動きが世界的に広がり、血圧降下から心臓保護に至る多彩な効果が相次いで報告されている。

血管をゆるめるアカセチンの高血圧対策

高血圧は心筋梗塞・脳卒中・腎障害を引き起こす最大のリスク因子であり、血管内皮機能障害や血管弛緩能の低下が背景にある。最新研究によれば、アカセチンは内因性一酸化氮(NO)産生を促すAkt/eNOS経路を活性化することで、血管を緩め血圧を下すという。加えて、女性ホルモン様作用も確認され、インスリン抵抗性が関与する高血圧モデルでも血圧低下効果を示す。

心臓を守る:糖尿病性心筋症との戦い

糖尿病によって引き起こされる構造的・機能的心臓異常「DCM」は、虚血性心疾患とは独立して存在する深刻な合併症だ。アカセチンは①血糖コントロールを改善する抗高血糖作用、②酸化ストレスから心筋を防ぐ抗酸化作用を併せ持つことが既知だ。

さらに、インスリン非依存性の糖取り込みを促進するCaMKII-AMPKおよびPKC経路への関与、線維化を抑制するPPAR-α/AMPKシグナル伝達への寄与、炎症マーカーを減らす効果が動物実験で実証されている。その結果、収縮能の向上、拡張能の改善、心室線維化の軽減などが達成され、臨床応用への期待が高まっている。

臨床実現に向けた課題と展望

動物データは確かに有望だが生体利用能が低いため、アカセチンを薬剤化するにはプロドラッグ化やナノカプセルなど先進の送達システムが欠かせない。今後の治験により、本天然由来化合物が高血圧とDCMを同時にケアする画期的治療オプションとなるかどうか実証されるだろう。

現在進行中のプロジェクトは、アカセチンの作用メカニズムをさらに詳細に解明するとともに、より実用的な経口製剤の開発目標に取り組んでいる。血圧降下と心臓保護の両機能を単一化合物で実現する点において、アカセチンは心血管医療の新たなステージを切り拓く鍵になる可能性が高い。