精密化学プロセスにおいて、原料ガスの純度確保はもはや必須条件である。水素、窒素、合成ガス、各種炭化水素はモノづくりの要だが、微量ながら塩素成分を含む場合が多い。この塩素が放置されれば、深刻な運用上の障害が連鎖する。

たった数ppmのクロライドでも、下流で使われる高感度触媒は「毒」を受けてしまう。この触媒被毒は、高額な触媒の効率・寿命を急激に低下させ、運転コストの増大と歩留まり低下を招く。さらにクロライドは配管や反応器の腐食を加速し、設備の早期故障や安全リスクにつながる。

それゆえ「クロライドゼロ」に近づける高度な精製技術が求められる。特殊な金属酸化物系触媒は、塩素分を選択的に吸着・化学反応させ、微量不純物までも除去する。ことに水素用精密脱塩素触媒では、ppbレベルの高純度化が要求される。

常温域や低温域では反応速度が低下しがちだが、最新の触媒設計はその弱点を克服した。高クロライド吸着容量を誇り、最大200 ppmの原料ガスも0.1 ppm以下まで精製可能な品種も登場している。合成ガス精製触媒としての安定稼働に欠かせない性能だ。

結局のところ、適切な精製剤・触媒の選定は戦略的判断である。運転温度、処理ガスの種類、初期クロライド濃度、ターゲット純度──これら要素を総合的に勘案し、低温脱塩素剤など製品ラインナップを活用することが、安定的かつ効率的なプロセス運転の鍵となる。