PolyDADMAC（ポリジアリルジメチルアンモニウムクロライド）は、独自の分子設計がもたらす高い陽イオン性を武器に、水から紙・繊維製品まで幅広い現場で活躍する合成高分子である。その性能の秘密は、その化学構造にある。

基本的骨格は直鎖状のホモポリマーで、モノマーのDADMACは4級アンモニウム基と二本のビニル基を併せ持つ。フリーラジカル重合によってこれらが連鎖し、ポリマー主鎖に沿った高濃度の正電荷を実現。分子量は数十万から数百万g/molに及び、用途に応じて最適化される。

最大の特徴は強い陽イオン密度による静電相互作用である。水中の負に帯電したコロイドや有機物を効率よく中和・凝集させるため、凝集剤・凝沈剤としての実績が高い。加えて pH4〜10という広範囲での安定性と優れた水溶性は、水質変動が大きい日本の上下水処理現場でも高い信頼性を生み出している。

繊維業界では染料の定着剤として採用される。ポリマーの正電荷と負に帯電した染料・繊維が強く結合し、堅牢な被膜を形成することで色落ちを防ぐ。この用途ではホルムアルデヒドフリー化が進み、人体への影響を抑えた高機能製品が登場している。

製紙工程では「レテンション・ドレナージ支援剤」として活用される。セルロース繊維や填料の保持率を高め、紙の強度向上とバージョン率の低減を実現。脱水が促進されることで製造ラインの効率も格段に向上する。

製品形態は液体濃縮物もしくは粉末で、現場の設備条件に応じて選択できる。陽イオン密度と水溶性・安定性という三本柱は、PolyDADMACをさまざまな産業プロセスの要所に据える原動力となっている。