ポリアクリルアミド（PAM）は、水処理において固体と液体を確実に分離し、高精度の浄水を実現するキーポリマーです。その機能を120％引き出すには、「使い方」がすべて。溶液の調製法、添加量の設計、注入プロセス、そして安全管理の各ステップに潜む落とし穴を回避することが不可欠です。本記事では、実践的な現場視点で、PAMを最大限に活用するためのベストプラクティスを総解説します。

1. 原液調製の鉄則
市販のPAMは粉末または顆粒で供給されるため、使用前に水で溶解させる必要があります。このとき使用する水は、硬度が低く塩分不純物を極力含まないクリーンな水源を選びましょう。水道水で十分な場合もありますが、井戸水や工業用水は事前にチェックが必要です。

  • 推奨濃度：原液を0.1～0.3 %で調製。
  • 攪拌レベル：モーター攪拌機で「中速（300～500 rpm）」をキープ。過度のせん断により重合度が低下し、凝集性能が落ちるため注意。
  • 時間：30～60分程度を目安に、完全に膨潤させた後、低速に切り替えて均質化。

2. 添加量の精密設計
PAM添加量は、原水1リットルあたりのインパリティ種類・濃度、pH、水温などによって最適値が大きく異なります。机上では決まらないため、現地ジャーテストの実施が必須です。複数の添加濃度で小試験し、最も澄み度が高く、かつ沈殿速度が速い条件を選択すると確実です。

3. 注入ポイントと撹拌シーケンス
「速混」→「緩徐混」への2段階コンタクトを徹底。まず、加薬直後は急激な乱流で瞬時に分散させ、その後徐々に撹拌強度を下げることで粒径の大きい丈夫なフロックが形成され、高い沈降性を得られます。

4. pH・温度の影響とセッティング
PAMは無機凝集剤ほどpHに敏感ではありませんが、一般的に酸性側やアルカリ側に極端に振れると凝集効率が下がる傾向にあります。推奨pH範囲は6.5～8.0程度が無難です。また、高温（≧50 ℃）では加水分解が促進され劣化しやすいため、保管・利用時は直射日光を避け、必要に応じて冷却ラインを検討してください。

5. 安全・環境対策
PAM本体は毒性が低く扱いやすい反面、溶液は非常に滑りやすいため、作業床の防滴シート敷設や滑り止めマットが必須です。また、ゴーグル・耐薬品手袋は基本装備。残液や使用済み容器は規則に則り、希釈・固化のうえ産廃業者へ引き渡すなど、適切な廃棄処分を徹底しましょう。

これらの現場で即実践できるポイントを押さえることで、PAMは単なる「薬剤」ではなく、持続可能な水資源マネジメントを支える「科学的ツール」へと進化します。調整→確認→改善のPDCAを回すことで、浄水性能向上と運転コスト削減を両立することが可能です。