高機能化が加速する繊維業界に、新たな抗菌材料として注目されているのがポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩(PHMG)だ。強力な殺菌・制菌作用と繊維への高い親和性を兼ね備えるPHMGは、臭い・変色・劣化の原因となる菌の繁殖を長期にわたり抑え、「衣料の衛生」と「素材寿命」を同時に向上させる画期的な存在である。

PHMGは合成高分子であり、細菌・真菌・ウイルスを網羅的に不活化する広域抗菌力を有する。実際の繊維加工ではフィニッシング工程に適用され、繊維と強固に結合するため、何度洗濯しても機能が持続。スポーツウェア医療用テキスタイル、さらにはカーテンやソファカバーといったホームファブリックまで、高い衛生基準が求められる製品群に威力を発揮する。

PHMGの抗菌機構は微生物の細胞膜を物理的に破壊するため、耐性菌の出現リスクが極めて低い点が特徴だ。また、繊維との結合安定性に優れるため、他の抗菌仕上げ剤のように洗濯により機能が急速に失われる問題がない。耐久洗濯試験でも数十回にわたり高い抗菌効果を維持することが報告されている。

さらに、PHMGは耐熱性・耐薬品性に優れ、加工段階での染色・樹脂加工とも相性が良い。腐食性が低く、デリケートな天然繊維や高機能合成繊維にも安心して適用できる。分散剤やアロマとの併用も容易で、デザイン性を損なうことなく抗菌効果を付与できるため、ブランド側の商品企画の自由度も高い。

安全性については、エアゾル化されず繊維内部に固定される用途では人体暴露リスクは極めて低く、衣服や寝具など消費財への使用実績も蓄積されている。今後も、消費者の「清潔志向」と「持続可能性」の二つのニーズを満たす材料として、PHMGを活用した高付加価値繊維の展開は加速していくと見込まれる。