サステナブルな畜産を目指す動きが加速する中、自然の恵みに着目した飼料素材が脚光を浴びている。中でも、多年生植物プラウシニア（Macleaya cordata）から採れるエキスは、サングイナリンとケレリスリンという2大活性アルカロイドを多く含み、抗菌・抗炎症・防虫作用の高さが実証されている。こうした機能は古来より民間療法で活用されてきたが、最新研究によりその科学的根拠が詳細に解明され始めた。

飼料添加物としての価値が一段と高まる背景にあるの、抗生物質耐性（AMR）問題と残留性への懸念の高まりだ。欧米を中心とした市場では、成長促進剤や治療薬の規制が強化されており、生産者は天然由来の代替素材を強く求めている。プラウシニアエキスは有害細菌の増殖を抑制し、腸内細菌叢のバランスを整えることで消化吸収の効率を飛躍的に向上、最終的な体重増加や飼料要求率（FCR）の改善につながる。また、慢性ストレスを起因とする疾患リスクを低減し、肥育期全体を通じて安定した生産性能を引き出すことも報告されている。

最大の魅力は「天然抗生剤」という呼び名が示す通り、薬剤耐性の発生や畜産物への残留という副作用を回避できる点にある。複数の試験系で大腸菌やサルモネラなど主要病原菌への抑制作効果を確認し、抗生物質との併用を減らすだけでなく、撤廢まで視野に入れた生産マネジメントを支援する。加えて、抗炎症作用が離乳ストレスや高温多湿環境下での免疫低下を軽減し、幼若家畜の死滅率を有意に低下させたという研究成果も発表されている。これらの要素は環境負荷を抑えながら高品質な畜産物を市場に流通させる「グリーンフードチェーン」構想の実現に大きく貢献する。

今後は用途別の最適配合比率や配合タイミングの検証が進み、さらなる生産効率化とコスト削減が期待できる。プラウシニアエキスの安定的な供給体制が整えば、日本を含むアジア諸国でも同様の飼料戦略が急速に普及する可能性は高く、飼育現場の収益性と食の安全・安心の両立という理想像に近づくだろう。