ベンチから臨床へ──がん・慢性炎症で期待を集める「1-メチル-D-トリプトファン」の10年
革新的な治療薬開発はしばしば、研究室での偶然の発見から始まり、やがて臨床応用の扉をたたく。その初期段階で最も重要なのは、疾患の分子メカニズムを解き明かし、ドライバーターゲットを突き止めることだ。
免疫学・腫瘍学の交差点に位置する「インデオールアミン2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)経路」は、免疫抑制の要として近年注目を浴びている。IDOはトリプトファンという必須アミノ酸を分解し、Tリンパ球をはじめ免疫細胞の機能を低下させる。がんや慢性感染症では、IDOの異常亢進により免疫は骨抜きにされ、がん細胞は逃亡を図る。
IDO活性を選別的にブロックする小分子として研究者たちが選んだのが1-メチル-D-トリプトファン(1-MT)。この化合物はIDOとその亜種IDO2を強く阻害することで、トリプトファン枯渇と代謝産物である免疫抑制物質の蓄積を防ぐ。その結果、がん周囲の免疫抑制性マイクロ環境が再び攻撃を許す状態に立ち戻し、CD8陽性T細胞による腫瘍殺傷能力が回復する。
前臨床試験では、1-MT投与を受けたがんモデル動物で腫瘍縮小と長期生存の有意改善が確認されており、多種の固形がんに広く応用可能な治療戦略になるとの期待が高まっている。さらに、自己免疫疾患や慢性関節リウマチなど炎症性疾患でもIDO経路が過剰に亢進しており、同化合物を用いた機構解析が急速に進んでいる。
研究室の試験管から世界規模の臨床試験へ――1-メチル-D-トリプトファンの軌跡は、精密標的治療の重要性を語る最たる事例だ。高純度サンプルを安定的に供給し研究者を後押しする寧波イノファームケム株式会社は、今後も免疫制御の謎に挑み、がんから慢性的炎症まで幅広い疾患に対する革新的治療薬開発を支えていく。
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