東京 — クエン酸トリエチル（Triethyl Citrate, CAS 77-93-0）は、クエン酸とエタノールを酸触媒下でエステル化することで得られる無色透明の液体である。ほとんど無臭で高純度であり、加熱下でも揮発しにくいため、高温安定性が求められる用途に最適である。

分子式C₁₂H₂₀O₇をもつこの化合物は、三官能カルボン酸由来の柔軟な骨格を活かし、ポリマー鎖の間に分子を挿入することで分子間力を緩和する。PVCやセルロース誘導体への可塑剤として、柔軟性と加工性を高める役割で製造現場で重宝される。

溶媒としての用途も広く、油脂、樹脂、さらには医薬活性成分との親和性に優れ、配合物の均一分散や溶解を促進する。

環境面では、合成可塑剤の中でも革新的だ。微生物による分解を受けやすく、自然環境での残留性が極めて低い。原料となるクエン酸も発酵法で得られる生分解性資源であるため、サステナブルケミストリーの観点で極めて有利に位置づけられる。これらの特徴により、製薬、COSME、食品添加物など厳格な品質基準を要する分野でも安心して採用できる環境配慮型素材として高い注目を集めている。