耐熱・耐久性能の限界に挑む航空宇宙、自動車、電子機器業界では、接着剤のスペック要求が年々過激化しています。その流れのなかで注目を集めるのが、シアン酸エステル樹脂(CE樹脂)をベースにした次世代高機能接着剤です。

CE樹脂はガラス転移温度が高く、化学薬品や湿潤環境に強い特性を持つため、摂氏200度を超える高温ゾーンでも接着強度を維持できます。従来のエポキシやアクリル系に比べ、熱サイクルが厳しい部位での剥離・クラックを抑制可能です。

硬化時に形成される高い架橋密度が、熱的に強固なネットワークを構築。さらに硬化後の低吸湿性により、長期間にわたって結合界面を安定させるという特徴があります。

実用化にあたっては、フェノールノボラック型CE樹脂の分子設計を見直し、耐衝撃性を高めるシステム開発が進められています。熱可塑性樹脂などの柔軟性付与剤をナノ分散させることで、振動や衝撃を受ける構造部材でも亀裂を防ぎながら、熱・機械的特性を維持する処方が確立されています。

量産適用の鍵となるのは塗布プロセスとの親和性です。硬化前の粘度チューニングと加熱プロファイルの最適化により、狭いボンドラインにも確実に濡れ広がり、かつ均一な膜厚を確保。これにより電子パッケージや航空機構造材への実装ハードルが一段と下がりました。

今後の高負荷設計を支える接着ソリューションとして、CE樹脂ベースの高機能接着剤は重要性を増していくことでしょう。