ポリエステルなど合成繊維への分散染料プリントで高品位な染柄を得るには、プリントパースト（捺染糊）の配合精度が胜负を分けます。糊剤の選択次第でレオロジー、処方安定性、そして最終的な柄シャープネスが大きく左右されるため、技術者にとって確かな処方ベンチマークは欠かせません。本記事では、Kr-712Aアニオン系増粘剤を軸に据えたプリントパースト処方で、どのように均一性と生産性を両立するかを詳述します。


Kr-712Aはアクリル系アニオン高分子の高濃度タイプで、従来のアルギン酸ナトリウムや天然ガムに代わる次世代増粘剤です。常温・軟水のみで短時間で完全に膨潤し、「混練時間の短縮」を実現。推奨添加量は2.5～3％（商品として）で、プリント方式や目標粘度に応じて上下調整可能です。まず軟水を撹拌槽に投入し、Kr-712Aを徐々に添加しながら高速攪拌。数分で均一で高粘度のエマルションが仕上がります。


均一な増粘剤エマルションができたら、分散染料を徐々に配合しながらフルゲート攪拌。Kr-712Aのアニオン性は分散染料との相性が極めて良好で、ポリエステル繊維への均染・高吸尽を促進。結果として、色濃度が高く、糸ジャゲや滲みのないシャープな柄線が得られます。また、粘度維持と沈殿抑制性に優れるため、昼夜を跨ぐ長時間保管でも性質変化が小さく、ロス低減とスケジュール柔軟性に貢献。中～高量産ラインでの安定稼働を実現する所以です。


技術的なメリットはもちろん、Kr-712Aを採用すると現場の省力化・高付加価値化が同時に狙えます。一定粘度を維持することで滲みや移染が抑えられ、より細かな柄表現や優れた浸透性を両立。プリント後の工程では、容易な洗浄性によって糊残りが少なく、仕上がりは柔らかなタッチに。これらの処方原則を押さえれば、「分散染料捺染用増粘剤」の選定や工程改善の判断がスムーズに。品質向上と生産効率の同時達成が見込めます。