化学式 C21H42O3、CAS番号111-60-4で知られるエチレングリコールモノステアレート(EGMS)は、ステアリン酸とエチレングリコールが基盤の機能性脂質。繊細なパール感を演出する化粧原料としてだけでなく、工業用潤滑剤の性能向上剤としても活用され、美容とモノづくりの双方に“質感”と“機能”を同時に付与する。

実際、化粧品・パーソナルケア分野では、パール剤・不透明化剤として定番である。乳液やシャンプーに少量配合するだけで上品な輝きを生み、皮膚やヘアにまとまりやすいしっとり感を残す。さらに感触改良剤(emollient)としての効果も高く、オンラインでも安定供給されているため、新製品開発の自由度を大きく上げている。

見た目の価値向上と並んで重要なのが乳化・増粘補助剤としての手腕。界面活性力によりO/W型、W/O型のいずれのエマルションでも分離を防ぎ、長期保存にも耐える滑らかなテクスチャーを実現。処方設計者にとって必須の一助である理由はここにある。

カテゴリーを越えて、工業用途でも存在感を発揮する。適度な温度領域で化学的に安定なEGMSは、塗料やコーティング剤のレベリング剤として表面仕上げを均一にし、繊維製品には柔軟性と潤滑性をプラスする。信頼できるサプライチェーンの確保は、クオリティ維持の要と言える。

需要拡大を支えるもう一つの要因は、安全性と環境適合性。化粧品配合基準内での使用が認められ、バイオ分解性も高い。エシカル消費が叫ばれるなか、EGMSは“性能”と“安心”を両立する選択肢として今後も存在感を増すだろう。