加齢に伴い物忘れや処理速度の低下など、脳の働きに変化が現れやすくなる。こうした認知機能の衰えを自然な形で遅らせ、アンチエイジングを目指す研究の中で腸内細菌由来の代謝物「ウロリシンB(UB)」が注目されている。UBに備わる二重の働き、すなわち抗酸化作用と抗炎症作用による神経保護効果だ。

活性酸素による酸化ストレスと慢性の炎症は、加齢に伴う認知機能の低下や神経変性疾患の進行を加速させる大きな要因とされる。これらの悪循環を断ち切るため、UBは細胞に溜まった活性酸素種(ROS)を除去し、体内の自然な抗酸化システムを強化することで神経細胞を損傷から守っている。

さらにUBは中枢の炎症であるニューロ炎症を鎮める効果も示す。アルツハイマー病や各種認知症の発症に関わる脳内炎症が抑えられれば、神経回路の維持・修復が促され、認知力の維持につながると期待される。

腸と脳が双方向に情報をやり取りする「腸脳相関」。その架け橋となるUBのように、腸内で生成された物質が脳に直接作用することから、予防医学や栄養戦略の観点でも注目が高まっている。

今後の研究が進展すれば、鞣花タンニンを含む食事で腸内のUB生産を促したり、UBを直接補完するサプリメントを活用したりすることで、認知機能をいつまでも健やかに保つ新たな選択肢が現れるかもしれない。