腸内細菌がポリフェノールの一種エラジタンニンを代謝して生まれる代謝物「ウロリシンB(UB)」は、細胞の健康維持に大きな可能性を秘めていると注目を集めています。

UBの最大の特長は、NF-κBシグナルを介した抗炎症作用です。NF-κBはDNAの転写やサイトカイン生成を制御し、炎症を司る中枢因子です。UBはIκBαのリン酸化・分解を阻害することでNF-κBの核内移動を防ぎ、iNOSやCOX-2など炎症性メディエーターの産生を抑えます。これにより、細胞へのダメージを軽減し修復力が高まります。

軟骨守護にもUBは重要な役割を担います。変形性関節症では炎症刺激により、網状組織を分解するMMP3/MMP13が増加し、逆にコラーゲンⅡ型やアグリカンといった基質成分が減少します。実験的にUB処理すると、この負の連鎖が一転して、分解酵素の抑制と合成酵素の増強が同時に起こり、軟骨構造の維持につながることが示されました。

さらにUBは細胞生存シグナルにも関与。加齢や炎症ストレスを受けやすい組織では、細胞凋亡が加速しますが、UBは生存経路を活性化させることでアポトーシスを抑制。これにより細胞の健全性を長期にわたって保つ効果が期待されます。

抗炎症作用、細胞外マトリックスの保護、そして抗アポトーシス効果――多方面の作用機序が明らかになるにつれ、UBは老化を遅らせ、疾患リスクを軽減する新しいアプローチとして、ヘルスケア研究の最前線に立ちはだかっています。