慢性的な炎症は現代人のさまざまな生活習慣病を招く要因として注目されており、その対策の一つとして機能性食品やサプリメント分野でも研究が加速している。

近年、ブルーベリーなどに含まれるポリフェノールとしてメディアでも取り上げられることが増えたプテロスティルベン(PTS)も、こうした炎症対策候補物質の筆頭格だ。

炎症のスイッチ“NF-κB経路”を断つ
炎症反応は本来、細菌やウイルス、外傷に対する自己防衛機構だが、ストレスや加齢、生活習慣の乱れによりスイッチが入ったままになると関節痛や心血管リスクなどを招く。

プテロスティルベンは、そうした炎症スイッチの主役であるNF-κB経路の活性化をダイレクトに抑えることで、TNF-α、IL-1β、IL-6などの炎症性サイトカインの過剰な産生を防ぐ。シンプルに言えば“炎症バケツに水を差す”ような働きだ。

抗酸化作用による「二段攻め」
活性酸素(ROS)の過剰産生は炎症を悪化させる第二のトリガーだが、プテロスティルベンは自身が強力なROSスカベンジャーとなるだけでなく、体内の抗酸化酵素SODやカタラーゼの発現を高め、組織内の酸化バランスを整える“二刀流”のプロテクターを務める。

市販品への活用が進む理由:レスベラトロールの2.0版
同属のポリフェノール・レスベラトロールと比較して、経口吸収率は高く、体内での滞留時間も約2倍とされるため、少量摂取でも十分な血中濃度維持が期待できる。これがサプリメント業界で“プテロ”ブームを巻き起こす背景でもある。

臨床に向けた現状と展望
前臨床データの信頼性は高いが、日本人被験者を含む大規模RCTの確立が進めば、動脈硬化や潰瘍性大腸炎など慢性炎症疾患の予防・補助療法として医療機関でも処方が可能になる日も近い。今後のエビデンス集積に注目したい。