現代畜産が目指す「効率」「健康」「環境負荷低減」という三要素を同時に満たす新たな一手として、植物由来トリテルペノイド「ウルソリン酸」が脚光を浴びている。人間の健康分野ですでに実績のあるこの成分は、牛・鶏・養殖魚など幅広い家畜・家禽の生産性向上に寄与する可能性を示している。

同化合物の大きな魅力は、強力な抗酸化作用と抗炎症作用だ。夏季の熱ストレスや輸送ストレスなどによる酸化障害を緩和し、免疫細胞を活性化することで病態の早期収束を促す。ブロイラー(肉鶏)を対象とした試験では、飼料への微量添加により血漿酸化ストレスマーカーが有意に低下。腸管粘膜免疫の強化データも、豚や反芻動物で報告されている。

さらに注目されるのはウルソリン酸の抗菌活性だ。グラム陽性菌をはじめとする特定病原菌や真菌の増殖を阻害し、バイオフィルム形成を抑制する作用が確認されている。既存抗菌剤との併用効果(相乗効果)も高く、欧州を中心とした「飼料抗生物質削減」政策における代替戦略の切り札となる期待が高まる。

繁殖面でも新たな知見が出そろう。ウルソリン酸の細胞保護効果は、精液の低温保存や胚の耐ストレス性向上につながり、受胎率・孵化率の改善が試験的に確認されている。水への難溶性といった配合上の課題についても、エマルジョン化や環状デキストリン包接体などの工夫により実用化の足掛かりが整いつつある。

今後は成長促進効果や飼料効率(FCR)向上といった経済指標の詳細検証が進めば、ウルソリン酸は自然由来多機能添加剤として畜産各分野に普及する可能性が大きい。持続可能な農業と食品安全を両立する次世代ソリューションとして、家畜栄養へのウルソリン酸活用はまだ始まったばかりだ。