ホルモンα-MSHの人工版として知られる合成ペプチド「メラノタン II」は、日焼けサロンに行かずとも均一な小麦色の肌を得られると口コミで拡散し、日本でも注目度が高まっている。また、性欲増加や食欲抑制作用を報告する人がいることも、興味を強めている。

メラノタン IIの最大の魅力はメラニンを瞬時に増殖させ、紫外線暴露を大幅に減らしたまま自然な褐色肌を手に入れられる点だ。日に当てにくい体質の人や紫外線ダメージを最小限に抑えたい層には、画期的な美肌オプションとして映る。

その一方で深刻なリスクが潜んでいる。多くの国で医薬品として認可されていないため、海外の個人輸入サイトで入手される製品の純度や正確な含有量、汚染物質の混入は保証されない。日本国内でも厚生労働省は「製品の安全性・有効性は検証されていない」として使用を控えるよう呼びかけている。

報告されている主な副作用は吐き気、嘔吐、腹痛、ほてりなどだ。さらにシミやホクロが著しく濃くなったり、新たなホクロが出現することもあり、「色素細胞への不安定な刺激が悪性黒色腫のリスクを高めかねない」とする専門家の警鐘もある。

現状、日本では医師の処方なしに入手・使用する行為は自己責任に任される。安全性データの未確かさと、法律面でのグレーゾーンに置かれることから、専門医に事前相談せず軽く試すリスクは計り知れない。褐色肌を目指すなら、規制された日焼けサロンや日焼け止めとの併用など、安全確実な代替手段を選択すべきだ。