新薬開発・製造を目指す企業にとって、医薬品原料および原薬(API)の調達は開発プロセスにおける最重要課題の一つです。市場動向の把握、サプライヤーの信頼性評価、厳格な品質保証体制の構築――これらを俯瞰的に理解しなければ、後の段階で大きなリスクを抱えることになります。本記事では、これらの観点を整理し、戦略的な調達に必要な実践的ステップをわかりやすく解説します。

ステップ1: サプライヤーのリストアップと精緻なリスクアセスメント
まずは候補となるGMP適合APIメーカー高純度医薬品原料専門企業を網羅的に洗い出し、実績・規制対応力・文書体制の三点を軸に精査します。規制当局の指針に基づく製造販売承認申請資料分析法証明書(CoA)の早期提供が可能かどうかも重要な判断基準です。

ステップ2: 主要供給国との連携と品質リスク管理
例えば「中国勢のAPIサプライヤー」は価格競争力に優れる一方、品質システムの透明性や継続的改善体制の有無を確認する必要があります。第三者監査報告書の提示、定期的な現地監査、不純物プロファイルとの突合など、品質保証のエビデンスを整理しておくことがポイントです。中間体をロット単位でワンストップ調達する場合も、同一論理でロットトレーサビリティを担保します。

ステップ3: 受入試験と受託分析活用
サプライヤーの証明書が整っていても、自社または外部機関による受入試験を省略すべきではありません。特に同一性試験、純度・不純物試験、残留溶媒試験などは、製剤の品質標準に即した項目設定が必須です。最新の分析装置を保有していない企業は、GLP/GCP準拠の契約試験機関とパートナーシップを構築して万全の体制を整えましょう。

ステップ4: カスタムシンセシス活用の留意点
自社製品に特化した特注中間体を発注する際は、化学構造、規格仕様、納期、価格テーブル、品質合意事項をいかに早期かつ正確に社内関係部門と共有できるかが鍵を握ります。医薬品原料総合商社やCDMOと戦略的パートナーシップを結べば、技術移管フェーズから量産ステップまでのギャップを最小化できます。

ステップ5: 価格変動を見据えた長期調達戦略
世界的な原薬価格の変動要因は、原油価格、為替、地政学リスクなど多岐にわたります。だからこそ「最安値優先」ではなく、品質と安定供給を兼ね備えたGMP認証サプライヤーとの長期契約を基本戦略とし、適切なバッファ在庫や代替供給源を確保することが持続可能な供給網の基盤となります。

まとめ
医薬品原料・APIの調達は、単なる購買業務ではなく事業継続性(BCM)の要です。サプライヤーの綿密なデューデリジェンス、受入・出荷工程での徹底した品質管理体制、そして市場の長期的展望――これらを俯瞰的に整合させることで、信頼される高品質製剤の安定供給が可能になります。