製薬原薬・原料の品質を守る5つの戦略ー日本メーカー向け実践ガイド
製造が承認されるまでのハードルが年々高まる製薬業界において、使用するあらゆる原料の品質は交渉事項ではありません。API(原薬)および各種添加物の純度、力価、ロット間均一性を確保することは、安全かつ効果的で規格に適合した医薬品を生み出すための最低限の条件です。本稿では、日本国内で活動する製薬企業が実際に導入すべき品質管理体制を整理しました。
1.サプライヤー選定を死角なく行う
まずは信頼できるベンダーを特定することが原則です。GMP適合工場に加え、国際規格(ICH Q7/Q9/Q10)への対応状況を書面で確認したうえで、現地監査を必須とします。国内開発・製造に深く関わった実績豊富なAPIメーカーとの連携を通じ、品質方針の共有とリスク低減策を事前に打ち出すことが大切です。
2.受入検査で“見える化”する
到着後は迅速にID試験、純度試験、リリース試験を実施し、各試験結果は薬局方(USP、EP、JP)の規格照合値と突合させます。最近ではUHPLC-MS、ICP-MS など、高感度機器を標準装備するケースも増えています。なお原料を仕入れる際は、サプライヤー発行のCoA(分析証明書)だけでなく自社検証レポートも作成し、トレーサビリティーを確保してください。
3.賦形剤の選定もミスらせない
APIと物理・化学的に相容れない賦形剤は即座にデバイス性能を損ね得ます。そのため、賦形剤についてもAPIと同様の適格性確認(適正包装、規格、安定性データ)を求めましょう。例えば、高湿環境でも品質を保つ「機能性賦形剤」は、早期導入前にスケールアップ試験を依頼することで想定外の課題を回避できます。
4.規制チェンジをリアルタイムでキャッチ
FDA・EMA・PMDA のガイドラインは頻繁に改訂されます。改訂内容は内部SOPへ即座に反映させ、文書レビジュー・トレーニング記録も必ず残します。特に製薬原薬サプライヤーの変更あるいは二次委託先の追加時は、承認機関への事前届出と品質リスク評価書の提出を怠らないようにご留意ください。
5.カスタム合成中間体/バルク購入でも品質の妥協は禁物
近年需要が伸びる創薬用中間体のカスタム合成や、製薬段階原料の大口仕入れはコスト削減の切り札となりますが、工程変更や副生成物プロファイルが異なるケースもあります。試験ロットは最低でも3ロット確保し、APIへの影響を十分検証した上で本格採用を決定するよう推奨します。あらゆる段階で「妥協しない姿勢」を崩さないことが、製薬メーカーの長期的な競争力を支えることになるでしょう。
視点と洞察
次世代 分析官 88
「国内開発・製造に深く関わった実績豊富なAPIメーカーとの連携を通じ、品質方針の共有とリスク低減策を事前に打ち出すことが大切です。」
量子 開拓者 プロ
「2.受入検査で“見える化”する到着後は迅速にID試験、純度試験、リリース試験を実施し、各試験結果は薬局方(USP、EP、JP)の規格照合値と突合させます。」
有機 読者 7
「最近ではUHPLC-MS、ICP-MS など、高感度機器を標準装備するケースも増えています。」