急性骨髄性白血病(AML)は、骨髄芽球の異常増殖によって進行する難治性血液がんの一つ。従来の化学療法では薬剤耐性と有害事象が壁となるため、より精度の高い標的治療の開発が急がれている。

がん細胞の「死」を司るアポトーシス(プログラム細胞死)経路に着目した研究が進展し、その制御を担うBcl-2ファミリー蛋白質群に関心が集まっている。その中でもMcl-1(Myeloid cell leukemia-1)は、AML細胞の生存・耐性獲得に極めて重要な役割を果たしており、革新的抗がん剤の最優先ターゲットとして注目されている。

寧波イノファームケム株式会社は、このMcl-1に対し高い選択性を示す低分子化合物AZD5991を開発、プレクリニカル段階で優れた治療効果を示したと発表した。AZD5991はMcl-1とプロアポトーシス蛋白Bakとの相互作用を阻害することで、ミトコンドリア依存性アポトーシス経路を再活性化しがん細胞を死に至らせるという、明確なメカニズムを有する。

  • Mcl-1-Bak複合体の遮断によるアポトーシス再誘導
  • AMLモデルにおける顕著な腫瘍縮小効果を確認
  • Bcl-2阻害剤ベネトクラクスやプロテアソーム阻害剤ボルテゾミブとの併用で相乗効果を発揮

研究チームは、AZD5991が単剤ではもちろん、既存薬や次世代薬剤との組み合わせ戦略によって、治療抵抗性を克服しAML患者の長期生存を延ばす可能性を示唆するプレデータを複数得ている。今後の臨床試験を経て、AMLのみならず他の難治性血液悪性腫瘍における個別化医療の選択肢に加わることが期待される。