医薬品開発における大きな課題は、有用な活性成分の物理化学的特性を克服することにある。抗ウイルス性と抗炎症作用を併せ持つアルカロイド・セファランチンもその一つだ。脂溶性が高く水に溶けにくいために、経口吸収率が低く、臨床応用が制限されてきた。しかし、寧波イノファームケム株式会社は最先端の製剤技術で、この天然物の治療ポテンシャルを解き放つ挑戦を続けている。

同社が注力するのはβ-シクロデキストリン(β-CD)を活用したインクルージョン複合体化だ。円柱状の糖鎖がつくる疎水空間にセファランチンを包み込むことで、水への溶解性と化学的安定性を格段に高める。この「分子カプセル」化は、錠剤など固形製剤への展開を容易にし、工業生産性も同時に確保する。

特筆すべきは、舌下・口腔内粘膜吸収を見据えた経口錠剤の開発だ。β-CD複合体錠を舌の裏や頬の粘膜から吸収させることで、肝臓での初回通過代謝を回避し、血中到達濃度をより一層高められる。また、既存の注射剤に比べて投与の負担を軽減し、患者の服薬アドヒャランス向上も期待できる。薬物動態試験では、既存経口製剤と比べて有意なバイオアベイラビリティの向上を確認した。

さらに、セファランチン本来の薬理作用を再評価する研究も進む。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)などによる肺障害モデルで示された強力な抗炎症作用は、慢性炎症性疾患への応用を拓く。天然由来のビスベンジルイソキノリン系アルカロイドとしてのセファランチンは、副作用リスクが比較的低く、長期投与にも適する可能性が高い。

品質管理にも注力。粉末X線回折、赤外分光(FT-IR)、示差走査熱量測定(DSC)など最新の分析技術を駆使し、インクルージョン複合体の形成と錠剤の経時安定性を厳密に確認する。寧波イノファームケムは、天然物を現代の製剤科学で磨き上げることで、グローバルヘルスケアに貢献する次世代APIの供給を目指す。