肥満治療の大きな挑戦に対する切り札として、医療界が注視しているのがGLP-1とグルカゴン受容体の「デュアルアゴニスト」として機能する新規ペプチド「マズデュタイド」だ。中国にて過体重または肥満の成人を対象としたGLORY-1など第3相試験では、画期的な体重管理効果が次々と裏付けられ、新薬承認申請目前の段階にまで到達している。本稿ではマズデュタイドの臨床経緯を振り返り、患者と医療提供者にとっての意義を整理する。

目立った体重減少効果
主要評価項目である体重変化では、プラセボ群と比較して統計学的に優位な減量が確認。特に4 mgおよび6 mg投与群において、平均で体重の10%以上を減らす例が多数を占め、長期投与での持続性も保証された。

心血管・代謝への付加価値
体重減少と並行し、血圧、LDL-コレステロール・トリグリセリド値、血清尿酸値など心血管・代謝リスクファクターが改善。肥満と循環器疾患・メタボリックシンドロームとの連鎖を断ち切る、包括的な治療メリットが示唆された。

忍容性に優れる安全性データ
投与に関連する主な有害事象は、主に初期投与時または増量段階における軽~中等度の胃腸症状(悪心、下痢)であり、多くは一過性。重大な有害事象の発現率は高くなく、長期投与に耐えうるプロファイルを有することが検証された。

こうした強固なエビデンスの裏付けを得て、マズデュタイドは日本でも上市申請が控えており、肥満治療の選択肢を劇的に拡大させる可能性を秘めている。デュアルアゴニストという革新的なメカニズムを支える、第3相試験の臨床データは今後のメタボリック領域研究の指針ともなるだろう。