アルツハイマー病(AD)は、記憶や認知機能の継続的な低下を特徴とする神経変性疾患だ。その進行は「シナプス」の損失と機能不全に強く関連すると考えられており、脳内に蓄積するアミロイドベータ(Aβ)プラークそのものよりも、シナプスの減少が認知障害の重症度とより密接に相関することが示されている。現在、これら不可欠な神経結合を守り、回復させる戦略が研究の最前線にあり、その中でも7,8-ジヒドロキシフラボン(7,8-DHF)に注目が集まっている。

7,8-DHFはフラボノイドの一種で、脳由来神経栄養因子(BDNF)の受容体であるトロポミオシン受容体キナーゼB(TrkB)への強力なアゴニストとして働く。BDNFはニューロンの生存、分化、シナプス可塑性に欠かせないが、アルツハイマー病ではそのレベルが低下し、シナプス機能不全を引き起こす。7,8-DHFはBDNFの有益な作用を模倣し、血脳関門を通過して全身に効果をもたらすことができる。

in vitro実験では、7,8-DHFがAβによる神経毒性から一次ニューロンを保護し、樹状突起の分岐とシナプス形成を促進することが実証された。この知見は、加齢に伴うシナプス減少に対して7,8-DHFが能動的に「つながり」を作り維持する可能性を示している。

5XFADマウスモデルを用いたin vivo試験では、7,8-DHF経口投与が脳内TrkBシグナルを活性化し、海馬のシナプス喪失を防いだうえにシナプス数と機能を回復し、記憶障害を救済するという説得力のある成果が得られている。詳細な7,8-DHF アルツハイマー病 治療プロジェクトはシナプス構造の維持に注目し、7,8-DHF 認知改善 実験では空間学習と記憶再生の向上が報告されている。

さらに、アミロイドプラーク沈着を減少させる効果も確認されており、Aβ産生自体には限定的な影響を示すことから、病理学的マーカーと機能的結果の両面に働きかける多彩な作用スペクトルが示唆される。抗酸化特性も相まって、ADにおける複合的かつ進行性の病態に網羅的に対抗する可能性を秘めている。

今後のアルツハイマー病治療において、シナプスヘルスを標的とすることは極めて重要だ。BDNFミメティックとして実証済みのシナプス保護効果と認知改善効果を併せ持つ7,8-DHFは、この分野における大きな前進といえる。神経変性疾患治療領域に携わる企業や研究者にとって、BDNF-TrkB経路標的治療の理解と応用は次世代薬のカギを握っている。

要約すると、7,8-ジヒドロキシフラボンはアルツハイマー病に対する有望な治療薬として台頭し、シナプスの保護・再生による認知低下の抑制という革新的なアプローチを提供する。その多面的な作用機序は、今後の臨床応用に向けた確固たる基盤となるだろう。