EGFR（上皮成長因子受容体）を狙い撃ちする分子標的薬エルロチニブは、肺がんや膵がんの治療で重要な役割を担っています。ただし、効果が高い分、皮膚の変化や胃腸の不調などさまざまな副作用が現れることも少なくありません。副作用をいかに早期に見つけて対策を取るかは、生活の質を保ちながら治療を継続するうえで欠かせません。

エルロチニブの副作用として最もよく報告されるのは皮膚症状です。ニキビのような発疹、乾燥、かゆみなどが顔・胸部・背部などに現れます。軽度であれば保湿剤や外用薬、スキンケアで改善することも多いものの、程度が強い場合は医療チームにすぐ相談してください。報告によっては、発疹の程度が重いほど治療効果が高まる傾向が示唆されていますが、まだ十分には解明されていません。

胃腸系では下痢が代表的で、脱水症状を招かないよう経口補水と食事調整が重要です。吐き気・嘔吐は制吐薬、食欲低下や疲労感も合わせて医師と対策を立て、栄養状態の維持を図りましょう。

頻度は低いものの、重大な副作用には間質性肺炎（息切れや咳）、スティーブンス・ジョンソン症候群様の重篤な皮膚障害、角膜潰瘍・穿孔、肝機能障害、消化管穿孔などが報告されています。新たな自覚症状が出たら、早めに主治医に連絡することが大切です。早期の対応が予後を大きく左右します。

エルロチニブの作用機序によってがん細胞だけでなく、EGFRを持つ正常細胞にも影響が及び、上記の副作用が起こりえます。また、エルロチニブとの薬物相互作用も注意が必要で、一部の薬剤は副作用を増強したり、エルロチニブの効果を減弱させたりします。内服薬だけでなく市販薬・サプリメントの使用も必ず医療スタッフに伝えましょう。

エルロチニブの副作用を上手にコントロールするには、患者・ご家族と医療チームの綿密な情報共有がカギです。「我慢できない」「少し気になる」といった些細な変化も遠慮なく相談し、指示された対応を確実に実行することで、治療の継続性を高め、生活の質を守れます。