院内感染や多剤耐性菌との闘いが続く日本の医療現場において、抗菌薬の作用メカニズムを正確に理解することは治療成績を左右する。セフォペラゾン/スルバクタム配合製剤は、耐性機構を回避しながら強力な抗菌活性を発揮する“戦略的コンビネーション”として注目されている。第三世代セフェム系抗菌薬セフォペラゾンに、βラクタマーゼ阻害剤スルバクタムをプラスしたこの製剤の効果を支えるのは、両成分の“協働シナジー”だ。

セフォペラゾン単独でも細菌の細胞壁合成を阻害する点では優れた効果を示すが、βラクタマーゼを産生する耐性菌ではβラクタム環が切断されてしまい、薬効が著しく減弱してしまう。そこで登場するのがスルバクタムである。スルバクタムは細菌由来のβラクタマーゼに不可逆的に結合し、酵素を失活。セフォペラゾンを“バリアから守る”ことで、耐性を持っても本来の標的に到達させる。この“盾役”としての役割が、第三世代セフェムの威力を最大化させる鍵となる。

その結果、セフォペラゾン/スルバクタム配合製剤は単剤では効きにくい耐性菌にも広く有効となる。特にメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)を含むスタフィロコッカス・アウレウスや各種グラム陰性菌の産生するβラクタマーゼに対して優位性を発揮し、呼吸器、尿路、腹腔内感染症、敗血症など領域を問わず使用される。実際、日本の急性期病院では院内肺炎や複雑性腹腔内感染症のファーストラインとしてすでに実績を積んでいる。

セフォペラゾン/スルバクタム配合粉末を調剤、または購入を検討する医療機関は、その作用メカニズムを押さえることで、耐性菌スペクトルの把握や適切な用量設計が可能になる。複雑化する細菌感染症に対する強固な砦となる本配合剤は、これからも日本の抗菌薬治療において欠かせない存在となるだろう。