ビタミンB6は、活性型であるピリドキサール5'-リン酸(P5P)として多様な生命維持メカニズムに不可欠です。他のB群ビタミンに比べて発症頻度は低いものの、特定の基礎疾患や偏食・制限食によって欠乏のリスクは確実に存在し、その兆候の早期発見が健康維持のカギとなります。

ビタミンB6不足の症状は多彩で、他のB群ビタミン欠乏と酷似する部分もあります。特徴的とされる所見としては、脂漏性皮膚炎様の発疹、舌の炎症(萎縮性胃炎)、口角炎(口角のひび割れ)などが挙げられます。神経症状としても、混乱・易怒・うつ状態・末梢神経障害が報告されています。神経障害は、神経細胞膜の主要成分であるスフィンゴ脂質の合成阻害が深く関与するとされます。また、P5Pはヘム合成の必須補酵素であるため、サイドロブラスティック貧血が合併することもあります。

欠乏の原因はまれに摂取不足による場合もありますが、大半は吸収・代謝障害に由来します。アルコール依存症、セリアック病、クローン病、腎障害が代表的です。さらに、結核治療薬イソニアジドや一部の抗てんかん薬もビタミンB6代謝を阻害します。加齢や慢性炎症などもリスク因子となるため、これらの背景を有する方は特に注意が必要です。

診断は、血漿PLP値測定や赤血球アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ活性係数などの生化学検査で行われます。活性型であるP5Pは、食事摂取のみならずサプリメントによる直接補給が有効です。ビタミンB6含有量が多い食品としては、肉類・魚介類、強化シリアル、バナナが挙げられますが、市販のP5P製剤を用いることで、即座に活性型を体内に供給できる利点があります。ピリドキサールリン酸欠乏症状を理解し、神経系・皮膚の健康維持を促しましょう。