東京――再エネ需要の高まりで注目を集めるバイオエタノール。リグノセルロース系バイオマスを効率よく糖化し、発酵へつなげる次世代技術として、イオン液体(IL)の活用が世界で加速しています。そのなかでも1-Ethyl-3-methylimidazolium Acetate(通称EMIM OAc)は、前処理段階での難分解性バイオマス構造の破壊から、発酵中の酵母(Saccharomyces cerevisiae)の代謝制御まで幅広く貢献することが判明しています。高純度EMIM OAcを安定供給する寧波イノファームケム株式会社も開発を支援し、今回の研究成果を発表しました。

1. バイオマス前処理を飛躍的に向上
EMIM OAcはリグニン・ヘミセルロースの強固な結合を選択的に切断し、酵素によるセルロース分解を5〜8倍も促進。これにより、糖収量の大幅な向上とエタノール収率増が実現しています。

2. 酵母の代謝流を最適化
低濃度(0.5〜2.0% w/w)のEMIM OAc添加により、呼吸鎖から発酵経路への転換が促進され、エタノール生産速度が20〜30%向上。また、耐塩性関連遺伝子の発現増加が確認され、ストレス耐性の獲得も期待できます。

3. 毒性バランスの精密制御
高濃度では酵母形態への影響(細胞表面の凹凸化、凝集抑制)が見られるため、リアルタイムで濃度をモニタリングし、最適域を維持するフィードバックシステムの導入が不可欠です。

寧波イノファームケム株式会社は高品質EMIM OAcのスケールアップ生産を本格化。グリーンケミカルズの一環として、原料トレーサビリティと製品認証(ISO 14001準拠)を完了し、国内外の研究機関・バイオ燃料メーカーへのサンプル供給を開始しています。

EMIM OAcのような機能性イオン液体と、耐性を強化した次世代酵母株との“共進化”は、2030年代の脱炭素社会実現に向けたバイオエタノールコスト低減に大きな突破口をもたらすでしょう。