産油量減少が指摘される中、シームレスなエネルギー供給を支えるために既存油田をどこまで採り尽くせるかが鍵となる。注目されているのが Enhanced Oil Recovery（EOR）と呼ばれる高度な三次採油技術だ。その要となる化学剤に、界面活性剤「リン酸ラウリル硫酸ナトリウム（LSNa）」が存在感を増している。

従来の一次・二次採油では岩石の微細空隙に取り残された原油が30～60％に達することがある。この残油を動員するために用いられるのが化学フラッディングであり、これにLSNaを配合した流体を貯留層へ注入する。LSNaの最大の武器は、油相と水相の界面張力を桁違いに下げる能力にある。

界面張力の低下により、油滴同士の凝集や岩石表面への付着力が大幅に弱まる。その結果、駆動流体が油を押し流しやすくなり、採油井までの移動距離と所要時間が短縮される。まさに微視的世界の“潤滑剤”として機能しているのだ。また、LSNaの両親媒性により油－水界面に選択的に吸着し、毛管力に抗する力を生み出す。

さらに、貯留層の高温・高圧環境でも高い化学安定性を保ち、原料入手しやすさ・低コストに加え、生分解性の高さから環境負荷も最小限に抑えられる。性能と持続可能性のバランスを両立するLSNaは、EOR用途におけるスタンダード候補として各社が本格導入を急ぐ。特化化学製品による革新は、資源採取の最適化とエネルギー供給効率の向上に大きく貢献する未来が目前に迫っている。