製紙ケミカルの世界では、より高い性能・レベルの持続可能性・工程効率化という市場要請が激化し、技術開発アップデートが日々進められています。その中心に位置するのがドライ強化剤技術であり、世界中の研究者・メーカーが「紙の限界」を更新するための新ソリューションを急ピッチで開発しています。

大きな潮流となっているのは、バイオ由来・生分解性ドライ強化剤の登場です。地球規模のレギュレーション強化やエコ志向の消費者ニーズを背景に、変性デンプン・セルロース誘導体、植物由来高重合体など再生可能原料由来の強化剤が注目されています。石油由来合成化学品への依存を減らしながら、環境負荷を低減できる点が大きな優位性です。

もう一つの注目テーマは“一剤多効”を実現する多機能添加剤。強度向上の基幹機能に加えて、フィラー滞留率の改善、ドレナッジの向上、ウェット強度賦与など、複数の効果を一本の化学品で達成できるように設計されています。添加点数を削減できるため、薬品在庫管理が簡便化し、薬品原単位低減によるコストメリットも期待されています。

さらに、“賢い”応答型ドライ強化剤の開発が進行中です。紙料のpH変動、温度変化、共存不純物濃度といった現場条件に応じて分子構造が最適な状態に変化し、強度発現を“リアルタイムチューニング”できる技術です。オンデマンドで紙質制御が可能となり、グレード変更時の短時間立ち上がりにも貢献します。

重合技術・ナノテクノロジーの進化もドライ強化剤の進化を加速させています。高次分岐構造やナノ粒子化などの新しいポリマー設計により、低添加量で高強度を実現し、ドレナッジやスリーブ形成など紙の他の特性への悪影響を最小化。効率的でかつ高付加価値な紙づくりを支えています。

つまり、“強く・軽く・環境配慮型”を同時に実現する紙製品を生み出す鍵は、ドライ強化剤イノベーションにあります。革新的な強化剤をフル活用することで、製紙業界はグローバル市場の要求を凌駕する製品を今後も提供し続けることができるでしょう。