消費者の健康と環境への配慮を徹底する「クリーンビューティ」ムーブメントが、化粧品業界の常識を書き換えた。防腐剤に求められる“安全性・効果性・天然由来性”の三要素を同時に満たすことは、これまでにない難題だった。その答えとして登場したのが、カプリルヒドロキサム酸（CHA）である。

CHAは、中鎖脂肪酸カプリン酸とヒドロキサム酸を組み合わせたアミノ酸誘導体だ。C8脂肪酸が微生物細胞膜の構造を乱すと同時に、強力な金属キレート作用で鉄イオンなどを奪い、バクテリア・酵母・カビの増殖を幅広く抑制する。作用の幅広さは、従来防腐剤を凌駕すると評価されている。

クリーンビューティとの親和性が高い理由は「天然由来」。椰子油から抽出されるCHAは植物ベース・サステナブルの観点で高く評価され、内分泌かく乱やアレルギー懸念が指摘されるパラベン・フェノキシエタノールといった旧来防腐剤とは一線を画す。また、皮膚刺激性が極めて低いため、敏感肌用製品にも安心して配合できる。

処方の自由度も優位だ。pH 3～7の広範囲で安定し、各種ビタミンや植物エキスとも高い相性を示す。これにより、“ハードルテクノロジー”に則り、複数の緩やかな防腐バリアを組み合わせることで全体の防腐剤濃度を抑えつつ、確実な効果を達成できる。

原料サプライヤーにもブランド側にも、CHAのメカニズムを正確に理解し、用途に応じた配合設計を行うことが急務だ。CHAを核とした革新的な防腐システム導入によって、クリーンビューティ市場の期待に応える“機能性×安心感×環境負荷低減”の新製品開発が加速する。