フェンベンダゾールは、幅広い駆虫スペクトラムと優れた安全性により、獣医療現場で欠かせない基幹医薬品として定着している。家庭で飼われる犬猫はもちろん、牛馬など家畜や近年増加するエキゾチックアニマルまで、動物種ごとの代謝や感受性の違いを踏まえた絞り込まれた治療戦略の策定が求められる。以下では、代表的な動物群ごとの使用実態と留意点を整理した。

犬猫への応用
犬では日常臨床で最も頻用される経口駆虫薬の一つで、通常はゼリー状ペーストや分包パウダーを数日子て使用。アスカリス・鉤虫に加え、アメーバ原虫ジアルジアへの効果も広く認められている。猫に対してもフェンベンダゾールは安全性が高く、アスカリスや条虫、ジアルジア症例で処方されることが多い。飼主にとって負担の少ない経口投与は、混餌しやすいパウダー剤形が選択されることが多い。

馬・反芻家畜での使用
馬では回虫や小型strongylusの駆除に欠かせない。ペーストまたは顆粒を体重別に投与し、牧場全体の回虫汚染抑制に直結する。牛や山羊では肺虫や胃腸管内線虫対策として飼料への配合や経口ドレンチに採用され、肥育効率の向上につながる。個体管理の手間を抑えつつ群れ全体で一定の薬物濃度を確保できるのが利点だ。

エキゾチックアニマルへの拡張
爬虫類、鳥類、ウサギ・フェレットなど小型哺乳類でも、原虫や線虫感染症治療でフェンベンダゾールが活用される。しかし体重が僅少であること、代謝経路が多様であることから、共通ペットの用量をそのまま流用することは禁物。必ず経験豊富な専門獣医師の指導を受ける必要がある。

投与・保管・安全対策の共通ルール
動物種に関わらず、指示された用量を確実に摂取させる工夫と、規定された期間を守ることが薬効を左右する。開封後は密閉・冷暗所で保管し、粉剤が湿気を帯びないよう注意が必要である。また総じて副作用頻度は低いものの、稀に食欲不振や軟便を認めることがあり、同時投与薬との相互作用も確認しておくべきだ。個体特性を踏まえたきめ細かなアプローチにより、フェンベンダゾールはいまや「動物すべての健康を守る」という視点での重要戦力として機能している。