マクロライド系抗菌薬の代表格であるアジスロマイシンは、細菌の蛋白質合成を阻害することで治癒をもたらします。その標的は細菌リボソーム50Sサブユニット。リボソームはmRNAの情報をタンパク質に翻訳する生命維持装置であり、アジスロマイシンはこの装置に強固に結合して正常な機能を停止させます。

50Sサブユニットへの結合により、ペプチジル-tRNAが A サイトから P サイトへの移行が物理的に妨害されます。結果、ポリペプチド鎖の伸長が完全にブロックされ、細菌のタンパク質合成が中断します。殺菌的ではなく抑菌的(bacteriostatic)とされる点が他剤との大きな違いで、細菌の増殖を抑えることで宿主の免疫が感染を除去する体制を整えます。

アジスロマイシンの真価はその驚くほど広い抗菌スペクトルにあります。まず、黄色ブドウ球菌や化膬レンサ球菌などグラム陽性菌に強力でありながら、従来のマクロライドでは効きにくかったグラム陰性菌 ― インフルエンザ菌、モラクセラ・カタラーリスなど ― への高い感受性を示します。また、肺炎クラミジア・マイコプラズマ肺炎菌・レジオネラ肺炎菌などの非定型病原体に対しても優れた活性を発揮し、呼吸器・泌尿生殖器感染症の治療に欠かせない薬剤となっています。

さらにアジスロマイシンは一部の原生動物やスピロヘータにも効果を認めており、ボレリア・ブルガルドフェリイによるライム病の治療実績も豊富です。このように身体の各部位を網羅する広範な菌種に対して有効であり、多彩な臨床シーンで実用されています。

抗菌メカニズムとスペクトルを正確に理解することは、治療薬選択の第一歩です。医療機関で適切な診断を受けたうえで使用すれば、効果を最大限に発揮し耐性化リスクを最小化できます。具体的な使用法や購入については、医師・薬剤師または信頼できる医薬品情報窓口にご相談ください。