高分子材料に柔軟性や加工性をもたらす可塑剤は、ポリ塩化ビニル(PVC)を中心に欠かせない存在だ。長らくDOP(フタル酸ジオクチル)が盟主だったが、健康・環境リスクが国内外で厳しく問われる昨今、業界は次世代ソリューションを求めている。その焦点が、フタル酸系ではないDOTP(テレフタル酸ジオクチル)だ。

DOTPの特徴 ── 安心とパフォーマンスの両立

DOTPはテレフタル酸と2-エチルヘキサノールを原料に合成されるため、DOPと化学構造が決定的に異なる。このために内分泌かく乱や生殖毒性が指摘されるフタル酸エステルに該当せず、EUのREACH規則や各国の食品衛生法規制でも有利に位置づけられている。製品安全を最重視するトイメーカーから医療機器企業まで、幅広いユーザーに安心して採用可能な可塑剤だ。

性能面でも“DOPより勝る”理由

DOTPの採用メリットは単なる規制対応にとどまらない。揮発性が低く、高温下でもポリマーマトリックスからの拡散・損失が抑えられるため、長期的な柔軟性が保たれ、製品寿命が大きく延伸する。また、吸水・薬品抽出への耐性が高いため、屋外建築材や自動車部品のように過酷な環境に晒される用途にも最適だ。

さらに優れた電気絶縁性を備え、高電圧ケーブルや電気機器の絶縁シースの信頼性を向上させる。熱安定性も高く、加工温度域が広いため生産リスクを低減。ローテンフレックス性も確保されるので、寒冷地での柔軟性保ちを求める製品にも適応する。

急増する需要:自動車~医療まで

DOTPの採用は産業の枠を越えて拡大中だ。自動車ではインパネやドアトリムなど車室内装材の柔軟性と耐久向上に貢献し、建設分野では床材、屋根防水シート、壁用フィルムで耐候性を高める。消費財では規制に敏感な玩具、食品包装まで、医療では点滴バッグや各種チューブにまで採用され、安全性が実証されている。

供給体制も整った転換のチャンス

高品質なDOTPを安定的に確保したい企業に向け、寧波イノファームケム株式会社をはじめとした大手製造業者がグローバル品質基準を満たす製品を供給体制で整えた。既存のDOP製造ラインを転用しやすく、オンラインでの小口調達も可能なため、切り替えコストの大半を抑えられ、競争力強化へ一歩近づくはずだ。

要するに、DOTPへの移行は一過性のトレンドではなく、「安心・安全」と「高機能」を実現する真の価値転換を示す選択肢である。今こそ、製品と責任の未来を拓く好機だ。