ジベレリン酸(GA3)は生育調整剤として高い効果を示す一方、まれに思わぬトラブルに見舞われることがあります。本稿では現場で報告の多い3つの事例をピックアップし、原因と確実な対策をコンパクトにまとめました。適切な対応でGA3の真価を最大限引き出し、品質と収量の向上につなげましょう。

ケース1 発芽がそろわない/発芽率が低い

症状: GA3処理後も種子の発芽がバラついたり、本来の発芽率に届かない。

考えられる原因:

  • 濃度ミス: 希釈が甘いと休眠打破のシグナルが届かず、逆に濃度が高すぎると発芽そのものを阻害。
  • 浸漬時間不足/超過: 浸透が不十分だと効かず、極端に長いと種子がダメージを受ける。
  • 種そのものの劣化: 古い種子や生命力の弱った種は、GA3前から発芽しない。
  • 薬液調製ミス: 粉体が完全に溶けていない、薬剤が劣化している。

解決方法:

  • 少量のテストを先行: 250 ppm、500 ppm、1000 ppmなど段階的に濃度を変えて最適値を割り出す。
  • 標準浸漬時間を守る: 一般的に24時間程度、種子が十分水没するように攪拌も忘れずに。
  • 種子の生存力を確認: GA3使用前に無処理区で発芽試験を行い、元々の発芽率を把握。
  • 薬液は毎回新規調製: 精製水を使い、溶解が不十分な場合は少量のエタノールを併用。調製後は冷暗所に短時間保管し、速やかに使用する。

ケース2 生育が異常に伸びすぎ/萎縮

症状: 茎が異常に細長く徒長する、あるいは生育が止まってしまう。

考えられる原因:

  • オーバードーズ: 推奨濃度をはるかに超えた散布・処理。
  • 品種・種類による感受性の差: 標準濃度でも敏感に反応する作物がある。
  • 適期を外した施用: 生育段階によっては、期待効果が得られないばかりか生育阻害が起きる。

解決方法:

  • 濃度を一段落とす: 徒長などが確認されたら即座に濃度を下げ、再度テスト。
  • 作物別の資料を参照: 専門機関の試験データや栽培マニュアルで最適濃度を確認する。
  • タイミングを見直す: 例えば葉面散布による生育促進は、生育ステージと気象条件に合わせて朝イチまたは夕方に実施。

ケース3 葉面散布しても効き目があまり感じられない

症状: 開花促進や果実肥大、伸長に期待した実感が得られない。

考えられる原因:

  • 設定濃度不足: 低すぎると反応閾値に届かない。
  • 薬剤の付着不足: 葉裏まで行き届いていない、展着剤未使用。
  • 環境ストレス: 高温直射日光下での散布は即効性を落とす。
  • 薬液劣化: 保存温度・時間に問題あり、活性成分が減少。

解決方法:

  • 慎重に濃度増量: 低濃度で無反応な場合は100 ppm刻みでテスト、異常反応を見極めながら最適値へ。
  • 散布を見直す: 両面にしっかりまんべんなく霧状に届くよう、ワンランク上のノズルや展着剤を投入。
  • 環境を読む: 気温が高く乾燥している時間帯は避け、夜明け前あるいは夕暮れ時に処理。
  • 新規調製が鉄則: 長期保管は極力避け、使用直前に少量ずつ作る。

まとめ

ジベレリン酸のトラブルを解決するには「濃度・タイミング・種子の質・薬液管理」を常に点検することがポイントです。定期的なモニタリングと、小地積でのテストを繰り返せば、作物ごとの最適処方が見つかり、確実に発芽向上・生育促進・収量増加が実現できるでしょう。