ジベレリン酸（GA3）は植物ホルモン界の強力な切り札だが、効果を最大限に引き出すには濃度マネジメントが生命線となる。適切な用量を守れば休眠種子の覚醒や生育促進、開花結実の向上を実現できる一方、設計値から外れると効かないどころか作物に悪影響を及ぼす恐れもある。本稿では、種子処理に最適なGA3濃度とその背景にあるメカニズム、そして現場で役立つ実践テクニックを徹底解説する。

なぜ「ppm」が勝負を決めるのか

GA3は細胞内でシグナル伝達役を果たし、その生理反応は用量依存である。休眠突破を促すには種子内部に一定濃度が必要となるが、設定値を下回ると効果が不十分、逆に行き過ぎると種子の恒常性メカニズムが乱れて発芽阻害や徒長（エチオレーション）を引き起こす。したがって、農業におけるジベレリン酸のメリットを享受するには、精密な希釈と個別最適化が不可欠だ。

発芽・生育それぞれの最適濃度レンジ

作物種子ごとに反応が異なるため、一律の数字は存在しないが、多くの園芸試験では50－1000 ppmの範囲で有用効果が確認されている。休眠性が強い場合は上位帯域を、比較的発芽しやすい種子は200－500 ppmあたりから実証してみると失敗しにくい。また、生育ステージも考慮しなければならない；茎葉処理で茎伸長や開花誘導を図る場合は10－100 ppmが標準的であり、構造異常を回避しながら狙いの生理変化を誘導できる。

過剰使用のリスクと現場対策

「倍増すれば効果倍増」は通用しない。GA3 を使いすぎると次の悪影響が報告されている：

  • 徒長（エチオレーション）：茎が異常に伸びて細くなり、葉も小さく衰弱する。
  • 樹勢低下：一見生長が良く見えても、ストレスや病虫による被害を受けやすくなる。
  • 発芽阻害：極端に高い濃度では逆に発芽が止まり得る。

これらを回避するため、現場では次の点を徹底すべきだ：

  • 製造元推奨量を必ず遵守し、小規模試験を経て本番投入。
  • 計量器は調性管理済みのものを使用し、正確なppmを算出。
  • 粉末・原液は冷暗所に保管し、希釈液は調製後速やかに使用。

まとめ

ジベレリン酸は「効くホルモン」であると同時に「扱いが難しいホルモン」でもある。作物別・生育段階別に最適ppmを突き止め、正確な処理と微調整を重ねることで、種子発芽の立ち上がりを加速し、健やかな生育と高収量を両立させられる。繊細なバランスだが、正しくマスターすれば大きなリターンが得られる。