工場の生産ラインを止めないためには、高純度窒素の安定確保が不可欠です。これまでは外部業者への依存が主流でしたが、納期リスクやコスト高が課題でした。こうした背景から、自社で手軽に窒素を生成する「プレッシャースイングアドソープション(PSA)装置」の導入が加速しています。その要となるのが、選ばれた炭素分子ふるい(CMS)です。

PSA法は「選択吸着」の原理を応用した技術です。圧縮空気を原料にし、CMSが詰められた複数の吸着塔を交互に稼働させます。CMSには埃同然の極微小孔が無数にあり、分子径の違いを利用して酸素と窒素を振り分けます。小さな酸素分子だけが高速で孔に侵入・吸着されるため、残る窒素だけを高純度で取出し可能になる仕組みです。

実際の工程はこうです。圧縮空気を吸着塔に通すと、酸素・水分・不純物がCMSに捕集され、窒素は通り抜けて製品ガスとして利用されます。CMSが吸飽和すると、塔内の圧力を急激に下げて吸着した酸素を脱着させ、次サイクルへ備えます。複数塔を連続稼働させることで、止まらない窒素供給を実現します。

CMSが買われる最大の理由は、99.999%という超高純度(5N)窒素を現地で必要量だけ生産できる点です。また、数万回以上の吸着・再生サイクルでも性能が維持され、長期間メンテ不要という耐久性が長期的なコスト削減につながります。ボンベ買いよりも大幅なランニングコストカットが可能で、特に大量に窒素を使う工場では投資回収は短期間で完了します。

CMSベースの窒素生成装置は、食品・飲料、電子、化学、医薬など幅広い業種へ展開しています。食品ではMAP(包装内充填)によって鮮度を保ち、電子業界ではハンダ実装工程での酸化防止に活用されています。また、化学プラントでは不活性ガスシールドが火災・爆発リスクを軽減。CMSなしでは語れない、安全で革新的なガス供給の背後にある役割です。

高品質CMSを搭載したPSA窒素装置は、サプライチェーン最適化と運転効率向上に直結する戦略投資です。必要なときに必要なだけ高純度窒素をつくる――CMSがその未来を具体化しているのです。